種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 5月30日(金)
漂着場所:千葉県館山市相浜170 相浜海水浴場 N34.926944, E139.827694
性別:メス
体長:118.6 cm
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。翌日にFSNで回収し、6月27日に解剖調査を行った。
千葉県柏市にある「手作り科学館Exedra」から、情報提供フォームに通報をいただきました。千葉県内のストランディング関係機関と情報共有し、今回はFSNで回収対応しました。FSNにてしばらく冷凍保存し、後日にExedraと解剖調査を行いました。
日本で漂着が見つかるスジイルカは2m以上の個体がほとんどですが、今回は120cm弱と珍しいサイズでした。動物の成長に伴う変化(体や各部位の大きさ、食べ物、病気など)を調べるには、子どもから大人までいろいろな段階の個体を調べる必要があり、今回のような事例からはとても貴重な記録が得られます。まだ小さな動物が死んでしまうのは残念ですが、野生動物である以上は仕方がない面もあります。
日本セトロジー研究会と勇魚会は、イルカやクジラなど海棲哺乳類の研究、情報交換、普及を目的とした会合です。毎年、国内各地でシンポジウムを開いていますが、今年は初の合同大会として愛知県豊橋市で開催されました(大会HP sites.google.com/view/cetoken35isana2025/ )。
FSNも毎年参加し、ポスター発表しています。今回は2023年度と2024年度のストランディング対応の記録、および2025年度のストランディング件数の急増について報告しました。他の地域のストランディングネットワークの方とも情報交換したところ、2025年の上半期は全国的にストランディングが増加しているようです。何か共通の原因があるのか、地域によって違う原因があるのかはわかりません。
静岡県においては、ストランディングを見つけて通報してくれる方が増えたおかげで、見かけの件数が増えているのではと考えています。自然や生態系について理解するには普段からデータを集め、整理しておく必要があります。
種名:スナメリ Neophocaena asiaeorientalis
発見日:2025年 5月24日(土)
漂着場所:静岡県湖西市白須賀244 地先
性別:メス
体長:168 cm
体重:38.5 kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。同日中にFSNで回収し、6月1日に解剖調査を行った。
この個体は解剖すると食道に50cm近いボラが詰まっていました。ハクジラ類の咽頭・喉頭では食道と気管が交差していますが、喉頭は鼻の穴にはまり込んでおり、食べ物が気管に入ることはありません。しかし大きなものが咽頭を通過すると喉頭が鼻の穴から外れることがあります。このスナメリも解剖時は喉頭が鼻道から外れていました。そのため食道に詰まったボラによって呼吸ができなくなり、死亡したと考えられます。
種名:スナメリ Neophocaena asiaeorientalis
発見日:2025年 5月14日(水)
漂着場所:静岡県浜松市中央区篠原町 篠原海岸
性別:メス
体長:156.5 cm
体重:約24 kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。同日中にFSNで回収し、5月18日に解剖調査を行った。
スナメリは日本でもっともよくストランディングする鯨種で、仙台湾~東京湾、伊勢湾・三河湾、瀬戸内海、有明海、大村湾(長崎)では定住する個体群が知られています。沿岸の浅い海域を好むため、駿河湾など深い海域には生息していません。
ここ最近、静岡県内でスナメリのストランディングが頻発しています。伊勢湾・三河湾の個体は遠州灘にも遠出することがあるようで、浜松や湖西での漂着は過去にも記録があります。ストランディングを記録、集計することでスナメリの生息海域の解明につながったり、そこから海の環境変動を理解するきっかけになるかもしれません。
種名:スナメリ Neophocaena asiaeorientalis
発見日:2025年 5月4日(日)
漂着場所:静岡県静岡市清水区三保 三保松原海岸
性別:メス
体長:112.4 cm
体重:10.5 kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。5月5日にFSNで回収し、5月18日に解剖調査を行った。
種名:スナメリ Neophocaena asiaeorientalis
発見日:2025年 4月24日(木)
漂着場所:静岡県浜松市浜名区三ヶ日町都筑500地先
性別:オス
体長:176.3 cm
体重:43 kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月25日にFSNで回収し、4月27日に解剖調査を行った。
種名:アカボウクジラ Ziphius cavirostris
発見日:2025年 4月21日(月)漂流確認
対応日:2025年4月23日(水)
漂着場所:静岡県静岡市清水区興津中町 地先海岸
性別:オス
体長:608.3 cm
体重:計測不能
対応内容:21日、死骸が三保沖を漂流しているのが発見される。22日に海岸に漂着し、23日に現地で解剖調査と解体埋却を行った。
アカボウクジラは駿河湾など深い海に生息しています。静岡県内では数年に一度は打ちあがりますが、オスの漂着は珍しいです。今回は体重を測定していませんが、おそらく2トン以上はあるでしょう。重機が入れないような幹線道路沿いの海岸に打ちあがったため、人力での対処になりました。
複数の学術機関と協力して調査解剖し、内臓の一部や骨格は学術標本として有効活用されます。それ以外の脂肪や筋肉の大部分は、どうにか人力で動かせるぐらいの大きさまで解体し、埋却処理となりました。
種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 4月22日(火)
漂着場所:静岡県浜松市西区馬郡町 坪井海岸
N34.675, E137.6388
性別:未確認
体長:未確認
体重:未確認
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。回収前に流失したため詳細は不明。
今回は発見の翌日から翌々日にかけて海が荒れました。ストランディングは人の立ち入らない季節外れの海岸や磯などでも発生します。そういった場所では海況を見て安全に行動する必要があります。
種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 4月21日(月)
漂着場所:静岡県沼津市我入道八間割 我入道海水浴場
性別:メス
体長:219.5 cm
体重:84 kg以上(腐敗により体液の流失が大きい)
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月21日にFSNで回収し、4月28日に解剖調査を行った。
種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 4月20日(日)
漂着場所:静岡県掛川市国安2808-2番 地先海岸
N34.64611, E138.06586
性別:メス
体長:225.9 cm
体重:>85.5 kg以上(腐敗により体液の流失が大きい)
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月21日にFSNで回収し、4月27日に解剖調査を行った。
種名:スナメリ Neophocaena asiaeorientalis
発見日:2025年 4月17日(木)
漂着場所:静岡県浜松市中央区中田島町 中田島砂丘
N34.660042, E137.738937
性別:オス
体長:約170.7cm
体重:残存部で23.5kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月18日にFSNで回収し、4月19日に解剖調査を行った。
種名:スナメリ Neophocaena asiaeorientalis
発見日:2025年 4月15日(火)
漂着場所:静岡県湖西市白須賀244 地先
N34.6781955, E137.5266939
性別:オス
体長:173.5cm
体重:43kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月16日にFSNで回収し、4月19日に解剖調査を行った。
種名:おそらくスジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 4月11日(金)
漂着場所:静岡県浜松市中央区西島町 遠州浜津波防潮堤
N34.652938, E137.761473
性別:オス
体長:約216.5cm(吻先と尾ビレを欠損)
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月12日にFSNで回収し、4月13日に解剖調査を行った。
種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 4月11日(金)
漂着場所:静岡県沼津市下香貫島郷2802-1 地先
N35.069328, E138.873607
性別:メス
体長:228.9cm
体重:114kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。4月11日にFSNで回収し、4月13日に解剖調査を行った。調査時に妊娠していることを確認した。
骨をきれいな骨格標本に仕上げるには、晒骨中にときどき洗浄して余分な肉や脂を落とす必要があります。また晒骨が終わった後も、骨から脂が滲み出してくることがあるので定期的にメンテナンスをします。
FSNのそばには桜並木があり、毎年メンバーや研究者達とお花見会をしています。今年も骨洗いの後はお花見をしました。
今年度は始まってからすぐに多くのストランディング情報が寄せられています。FSNの知名度が広がっているのか、はたまたストランディング自体が増えているのか、いずれにしろ今年度も可能な限りストランディングに対応して、鯨類や海の魅力を発信したり、研究活動に貢献していきます。
種名:アカボウクジラ Ziphius cavirostris
発見日:2025年 3月22日(土)
漂着場所:静岡県沼津市内浦長浜3-1 伊豆・三津シーパラダイス敷地内旧遊覧船桟橋下
性別:メス
体長:518.7cm
体重:不明(おそらく2tぐらい)
対応内容:死骸が伊豆・三津シーパラダイス敷地内の桟橋近くに流れ着いた。3月22日にFSNで回収し、3月28日に国立科学博物館と合同で解剖調査を行った。
アカボウクジラはFSNと縁の深い鯨種です。駿河湾にはアカボウクジラの定住群があるとされており、毎年1頭は打ち上がっています。
解剖の結果、動脈硬化の症状が見られました。これは他の鯨類にはなく、アカボウクジラではよくあることだそうで、日本だけでなく国外のアカボウクジラでも同じ症状が見られるそうです。しかし何が原因で動脈硬化になるのか、そしてなぜアカボウクジラだけがそうなるのかはまだわかっていないそうです。
種名:カズハゴンドウ Peponocephala electra
発見日:2025年 3月17日(月)
漂着場所:静岡県御前崎市御前崎1074-14 地先
N34.6050437, E138.2332249
性別:オス
体長:184.1cm
体重:57kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。3月18日にFSNで回収し、4月6日に解剖調査を行った。
種名:シワハイルカ Steno bredanensis
発見日:2025年 3月12日(水)
漂着場所:千葉県匝瑳市今泉
N35.6455931, E140.5846150
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。
本件は千葉県立中央博物館に情報共有し、同博物館が回収と調査を行いました。FSNでは静岡県内だけでなく、各地域の研究機関やストランディングネットワークと協力しています。静岡県外のストランディングでもご連絡をいただければ当地のネットワークに情報共有します。
種名:スナメリ Neophocaeana asiaeorientalis
発見日:2025年 3月1日(土)
漂着場所:静岡県浜松市西区篠原町 篠原海岸
N34.672984, E137.652135
性別:メス
体長:174.1cm
体重:59.5kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。FSNで回収し、3月8日に解剖調査を行った。調査時に妊娠していることを確認した。
種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2025年 2月26日(水)
漂着場所:静岡県御前崎市白羽6850地先
N34.6020693, E138.1901037
性別:メス
体長:213.5cm
体重:102kg
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。FSNで回収し、翌日に解剖調査を行った。
種名:種不明マイルカ科 Delphinidae gen. sp.
発見日:2025年 2月18日(火)
漂着場所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴岬
体長:約2m
対応内容:死骸が海岸に漂着していた。
この個体は神奈川ストランディングネットワークに情報共有し、そちらで対応することになりました。神奈川県では新江ノ島水族館や神奈川県立生命の星・地球博物館、日本大学や東京農業大学の研究室などがストランディングに対応しています。博物館で冷凍保存された後、4月12日に博物館で調査・解剖を行いました。
FSNでは静岡県内だけでなく、各地域の研究機関やストランディングネットワークと協力しています。静岡県外のストランディングでもご連絡をいただければ当地のネットワークに情報共有します。
種名:ザトウクジラ Megaptera novaeangliae
発見日:2025年1月5日(日) ※年末からあったという話も有り
撤去日:2025年1月23日(木)
漂着場所:千葉県南房総市千倉町白間津
性別:メス
体長:9.85m
体重:約 7.8 t
対応内容:死骸が海岸に漂着腐敗していた。現場が重機の乗り入れが困難な場所であったため、発見後しばらくは対応について協議され、FSNからも情報提供を行った。最終的に県からFSNに依頼があり、クレーンをつかった吊り上げを行い、近くの砂浜に運搬して埋却した。
ザトウクジラは長い距離を回遊する鯨類で、夏は北の冷たい海に、冬は南の暖かい海で出産と子育てを行います。この回遊の間に、子どものクジラが海岸に打ちあがることが毎年あります。房総半島のような出っ張った地形はそうした事例が多いです。
今回打ちあがった場所は起伏の激しい磯で、このような地形は重機の乗り入れが困難です。道路際から大型クレーンを使えば吊り上げることは可能ですが、そのためには適切な吊り具を用意し、クジラの重心を正確にとらえてバランスをとらなければなりません。そこで県および地元の土木会社からFSNに吊り上げの協力依頼があり、出張対応しました。
日本鯨類研究所では大型クジラの漂着について「寄鯨調査事業」を行っています(日本鯨類研究所HP)。今回のザトウクジラもこの対象となったため、日本鯨類研究所の調査後に撤去を行いました。