ホネホネサミットは、全国の骨好きが集まって自慢のコレクションを展示したり、標本技術の情報交換を行うイベントです。大阪市立自然史博物館の有志団体であるホネホネ団が主体となって発足、開催されてきました。
今年は初めて静岡県を舞台に、静岡に拠点をおく4団体の手で共催されました。
サミットHP https://honesami2024.wixsite.com/honesami2024
共催:駿河ほねほね団(NPO法人静岡県自然史博物館ネットワーク)、一般社団法人富士ストランディングネットワーク、ふじのくに地球環境史ミュージアム、美しく豊かな静岡の海を未来につなぐ会
FSNは昨年のサミットに初参加し、ストランディングしたアカボウクジラの全身骨格を展示したところ好評をいただきました。今年はストランディングへの対応方法、クジラに対してすべきこと、してはならないことの解説や、漂着したクジラ死骸からの骨格標本作成など、ストランディングにまつわるさまざまな活動を展示しました。
種名:コマッコウ Kogia breviceps
発見日:2024年6月19日(水)
調査日:2024年7月7日(日)
場所:静岡県御前崎市白羽
性別:オス
体長:243.5cm
体重:不明
対応内容:6月19日にストランディングが見つかり、麻布大学の冷凍庫にて一時保管されていました。7月7日に麻布大学とFSNで解剖調査を行い、学術標本を採取しました。
コマッコウは深海性の小型ハクジラです。マッコウクジラとともにマッコウクジラ上科に属していますが、体長は大きくても3~4m程度です。ストランディングは比較的珍しく、国内全体で年間数例の報告があります。FSN発足後の静岡県では初めての事例なので、骨格標本を作製することにしました。
種名:アカボウクジラ Ziphius cavirostris
発見日:2024年7月2日(火)
調査日:2024年7月4日(木)
場所:静岡県富士市中柏原新田
性別:不明
体長:残存部で約4m
体重:不明
対応内容:砂浜にストランディング。発見された時点で腐敗が進み、体の後ろ半分がない状態でした。FSNと国立科学博物館研究員による調査ののち、埋却。FSNでは骨格標本を教育や研究目的として所持することにしました。
種名:スジイルカ Stenella coeruleoalba
発見日:2024年6月1日(土)
回収日:2024年6月4日(火)
調査日:2024年6月5日(水)
場所:静岡県浜松市南区白羽町
性別:オス
体長:225.3cm
体重:130kg
対応内容:砂浜にストランディング → FSNに移送 → 博物館の研究員や獣医系学生と一緒に解剖調査を実施。FSNでは骨格標本を教育や研究目的として所持することにしました。
2024年1月中旬から大阪湾ではマッコウクジラの目撃が相次いでいました。2月には堺市の港湾に迷入し、おそらく出られなくなったものと考えられます。2月18日にはSNS上で「クジラが動いていない」という情報が挙げられており、19日に正式に死亡が確認されました。そしてこのクジラは、堺市内の埋立地にて学術調査を行い、骨格標本として博物館に残されることが決まりました。
大阪では2023年にも大阪市淀川にマッコウクジラが迷入→死亡しており、そのときは限られた調査しか行えず海洋投棄されてしまったことがあります。FSNは当時からストランディング対応の専門業者として活動していましたが、2023年のクジラには関与できず、断腸の思いで居ました。今回の個体こそは、調査を通じて、クジラの生態や死んだ原因に関する情報、未来に残せる貴重な標本が得られるものと期待しています。
静岡に拠点を置く我々は、今回の対応事業者としては大阪府からの依頼は受けられませんでしたが、これまでの活動で培われた経験を活かさずには居られません。現地で調査する研究機関にコンタクトをとり、ボランティアとして参加することになりました。
種名:マッコウクジラ Physeter macrocephalus
発見日:2024年1月?日
調査日:2024年2月22-23日
場所:大阪府堺市堺港
性別:オス
体長:約15m
体重:約32t
対応内容:ボランティアとして学術調査に参加。22、23日に解剖を含む学術調査を行い、26日に埋却処理。骨格は後で掘り返して標本化の予定。
今回のマッコウクジラについては大阪市立自然史博物館、日本鯨類研究所、国立科学博物館を中心とした調査チームが組まれ、学術調査が行われました。調査結果は近いうちに公開されるそうです。
今回のクジラから、マッコウクジラや海の環境を理解する発見が得られることを期待しています。また学術機関だけでなく、我々ひとりひとりが、人間以外の生き物や海の環境について考えなければならない時代がきていると思います。人間と生き物、共存していくために何が必要か、この難しい課題に取り組む人が一人でも多くなればと願っています。